DAIさん帝国

アクセスカウンタ

zoom RSS 同じような闘病生活を送った自分がこの漫画を読んでみて、『さよならタマちゃん』

<<   作成日時 : 2013/10/15 23:08   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 33 / トラックバック 0 / コメント 0

画像

『さよならタマちゃん』 武田一義 イブニングKC

漫画家アシスタントであった作者がガンに侵され、その闘病の模様を綴ったこの漫画。単行本発売当初は話題になってましたし、かくいう自分も連載当初より注目し、ずっと連載を追い続け、単行本も買って読んでました。ただ、ものすごく面白かったと思うのですが、この漫画を読むとどうにも平静でいられなくなる自分が居ます。この漫画を読んで自分が感じている面白さは、他の人がこの漫画を読んで感じたものとは明らかに違うと思うのです。感想を書きたいなと思いつつも、どうにもうまく言葉がまとまらず書けなかったんですよ。この漫画に関する自分の言葉は感想と言うよりも、むしろ自分語りになってしまいそうだから。

ええ、実は自分もこの作者と同じ病気になり、同じように闘病生活を送っていた時期があったのです。病気になったのはもう10年以上昔の話ですが、圧倒的な共感と共にその当時の記憶を鮮烈に呼び覚まさせる漫画だったのです。どうせ、うまく感想書けないとは思うので、せっかくだから自分語り上等でつらつら書いていってみたいと思います。


精巣腫瘍。要は金玉のガンですね。若い男性に患者が多く、その発症は10万人に一人くらいというレアな病気。作中でも描かれてましたが、爆笑問題の田中やネプチューンのホリケンも同じ病気にかかったという。早期であれば比較的短期間の治療で完治するガンで、近年では「治るガン」の一つと言えるかもしれません。ただ、病状が進展しガンが転移していれば、その後に待ち受けるのは抗がん剤治療という長く苦しい治療の日々なのです。

この作者の場合、ガン転移が見つかり、その後の抗がん剤治療の模様が漫画として描かれておりました。自分も同じく抗がん剤治療を受けて入院生活をしていたので、この漫画に描かれる全てのことが自分の体験と被ってくるのです。それがもう懐かしくて、共感できて、心に響いてくる。

抗がん座治療で吐き気が止まらず苦しみまくった日々も、同室の患者との些細なことによるストレスも、入院患者同士での病気自慢も、もうその何もかもが自分が経験した入院生活そのもの。


自分も大学病院に入院していたから同じ経験があるのですが、若手医師達のいい教材として体をジロジロ見られるというのはよくありました。執刀医の先生が自分の手術痕を若手医師達に見せながら「どうだ、オレが切って縫合した後は綺麗だろう」とドヤ顔で語っていたのは未だによく覚えております。大学病院という場で先進医療を受けられる代償としての、モルモット状態。それが等価交換として成り立つかどうかは人によって判断が分かれるかもしれませんね。


精子の冷凍保存、これも体験しましたよ。抗がん剤治療はあまりにも強い毒性を伴うため、がん細胞を死滅させるのと同時に、あなたの精子も死んでしまいますよという宣告を受ける訳です。ガン告知の際もそれは強いショックを受けたのですが、この告知も相当なショックを与えてくれます。そんな状態で、精子の冷凍保存するからオナニーして射精して精子を提出してくださいと言われる訳ですよ。それこそAVみたいに看護婦さんがお手伝いしてくれるなんて事はあるはずもなく。

この作者の体験談では病院の一室にAV完備の立派な部屋があってそこで用を足す訳ですが、自分の場合なんか、薄暗いトイレですよ。しかもおかずは父親が買ってきたエロ本ですわ。精神的にかなりショックを受けている状態に加えて、父親の買ってきたエロ本で強制的にオナニーしなきゃいけないこの状況と来たら、もう忘れるに忘れられません。しかし、精巣腫瘍の闘病記でこのことをしっかり描いているのはさすがだなとも思う訳です。


5年生存率。普段の生活ではまず聞かない言葉ですが、ガン患者にとってこの言葉は告知の際に必ず聞かされる言葉なのではないかと思います。自分の場合、この作者より病気の進行が進んでおり、肺転移一歩手前の状況で、5年生存率は80%でした。要はあなたの今の病気の進行状況だと、5年後に生きている確率は80%だという訳です。

例えば降水確率80%と聞いたら、それはもう間違いなく雨が降るだろうというレベルだと思います。それを考えれば5年生存率80%という数字は安心していい数字なのかもしれません。ただ、逆に考えれば「今のあなたの病状であれば10人に2人は死にます」と宣告されたのと同義な訳で、その数字の頼りなさと来たらどうですか。

病気にかかった20代にして死に直面する機会なんて一度もなかった自分が、突然に宣告される訳ですよ。これまで全く意識しなかった「死」を目の前に突きつけられる訳です。そのショックの大きさたるや。


作者と同じく精巣腫瘍になった市川さん。この人の状態がまさに自分が体験した状況そのもので、無菌室に入って通常の倍以上の抗がん剤を投与する超大量化学療法は、まさに自分が受けた治療そのものでした。そして、そんな治療を受けなければならないほどに病気の進行を放置していたのもまた同じ訳です。病気になってから初めて分かる健康のありがたみと、漫然と病気を放置していた事への後悔の念。それはまさに、ガンという病気の恐ろしさと、死ぬかもしれないという恐怖が与えてくれる感情な訳です。


大学卒業を間近に控えて、就職を待つばかりの時期に発病し、入院。まだ20代前半の自分にとってやりたいことはそれこそ山のようにありました。退院したら、アレをしたい、これもしたい。あそこに行きたい、ここにも行きたい。入院中はそんなことばかりを考えて過ごしていた気もします。それはまさにやり残した未練と呼ぶべきもの。

人間が死を恐れるのは、この世に未練があるからじゃないのかと。そして、この世に未練がなくなる事なんてあり得ないから、人間は死ぬのが怖いんだと思うのです。

そう、生まれて20数年にして、ガンにかかって初めて知った感情。「死にたくない」というその気持ち。未練を残したまま死んでしまうかもしれないという状況はやはり怖かったのです。

人間いつ死ぬかは分からない。明日死ぬかも、50年後に死ぬかも分からない。人間いつ死ぬか分からないのだったら、やりたいことをやりたいときにやっておくべき、というのは自分のその後の人生における指針になっています。病気になったことは辛かったし、抗がん剤治療も辛かったけど、その経験から得たこれらの感情は自分の人生にとって大きな宝物になったと思っています。


だからこそ、このセリフには狂おしいほどに同意してしまうのです。同じ病気にかかり、同じような闘病生活を戦い抜いた同士であるからこそ、激しい共感を抱くのです。

「病気が贈り物」なんて思えるのは、病気が完治した者だからこそ思えるエゴなんじゃないかとも心の片隅に引っかかるのですが、それでもガンになったことにより分かったこと、見えたこと、自分の糧になった事というのはやはりあるのです。それは闘病中に支えてくれた家族のありがたさであったり、闘病生活によって得た人生観であったり、その後の人生そのものであったり。

当時漫画家アシスタントであった作者は、ガンになってもその職を失うことなく、退院した後に職場復帰することとなります。そして、自身の体験を元に描いたこの漫画の連載が決まり、単行本化されるまでに至る訳です。まさにそれは病気という贈り物によって得た物だったでしょう。

対して自分はと言えば、ガンにかかることにより内定していた会社へ就職することが叶わなくなり、退院後は無職生活を送ってたりもしました。しかし、その暇な無職期間に始めたのが実はこの「DAIさん帝国」というサイトでもあり、このサイトが縁で知り合った人々や、得た経験などは、自分にとって大きな宝物になっているのもまた事実です。ガンにかかることによりその後の人生が大きく変わってしまったと今でも思ってますが、今ここに居る自分はガンにかかったからこそ居る自分なんだと思うと強い感慨を抱いたりもするのです。

20代という若い時期にガンにかかったことは間違いなく苦難であったけど、逆に他の人には体験し得ない事を体験し、普通の人生では味わえない事を味わえたと思うと、良い経験を出来たんだなとしみじみと思えるのです。

病気が完治してもうすでに10年以上経ち、その当時の気持ちも薄れかけて日常の生活に埋没していた部分もありました。そんな時にこの漫画に出会い、当時の気持ちを呼び覚ましてくれたという部分で、自分にとってこの漫画はやはり面白かったと思うのです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 33
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた
ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
面白い 面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
同じような闘病生活を送った自分がこの漫画を読んでみて、『さよならタマちゃん』 DAIさん帝国/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる