時代は変われど、この世界を生きる変わらないわたし達、『この世界の片隅に』上巻

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『この世界の片隅に』上巻 こうの史代 アクションコミックス

『夕凪の街 桜の国』のこうの史代さんの新刊。舞台は昭和18年、戦時中の広島の呉。ただ、戦時中だからといって悲壮感溢れる戦争物語となっていないのがこの作者らしいところ。戦時中ではあるんだけど戦争その物がメインではなく、あくまで昭和18年を生きている人々の暮らしとそれぞれの人々の物語をメインに描いているところに何とも心惹かれるものがあるんですよね。

広島から呉に嫁ぐことになったヒロインのすず。戸惑いながらも旦那さんと心うち解けていく様子や、嫁ぎ先での家庭の暮らし、ほんの些細な日常が、こうの史代さんの丁寧な日常描写と風景描写によって描かれ、読んでいるうちにすっかり戦時中の日本の世界に入り込めていけます。そしてこの物語に生きる人々も、今を生きる人々と何ら変わることなく、ほんの小さな事で悩み、そしてほんの小さな事で喜びを感じる日常を生きているという感じがものすごく心地よく胸に染みいってくるんですよ。

物語は上下巻ということで、次の巻で完結のようですが、物語的にはやはり終戦まで進むのでしょうか。戦時中とは言え、どちらかといえば穏やかであった上巻に比べ、下巻はどのようになっていくのか。呉といえば軍港であり、空襲の被害も当然大きかったでしょうに、そう考えるとどうなっていくのかという気持ちもありますが。

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