そこで少年は出会ってしまった、憎むべき少女に、『とある飛空士への恋歌』

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『とある飛空士への恋歌』 犬村小六 ガガガ文庫

2008年ラノベ界の話題の一つとなり、出版社から個人サイトに至るまで2008年のランキングではその多くに取り上げられることとなった『とある飛空士への追憶』。その『とある飛空士への追憶』発売から1年。遂に続編となる『とある飛空士への恋歌』が発売です。

1巻完結モノとしてあまりにも綺麗に読者の心に残る物語となっていた前作。しかし、完結してしまっているからこそ続編はあり得ないだろうと誰もが思っていたところに、この『とある飛空士への恋歌』の発売ですよ。安易な商業主義に走っての続編なのか、はたまた僕らの予想を覆すかのような続編なのか。前作読者なら誰もが期待せずにはいられない続編であり、前作読者なら誰もが不安にならざるを得ない続編、それがこの『とある飛空士への恋歌』なのです。

で、実際読んでみたところの感想はといえば、予想通りでもあり予想通りでもなかった物語でありました。

予想通りでなかった一つ目は登場人物の一新。事前情報でも流れてましたが、これには一安心。続編というからには前作の物語を引き継ぐのかと思いきや、世界だけ受け継いでの別の物語ですね。前作が綺麗にまとまっていたので、後日談とかで話を引っ張られるのもちょっと違う気がしますしね。

そしてもう一つ、予想通りでなかった大きな点はこの物語が1巻完結でなかったという事。これはちょっと意外でした。前作のイメージが強かったので、1巻で綺麗に終わる物語を期待していた部分もあったので、読み進めていてなんだかものすごく違和感が。中盤に至っても物語に大きな展開はなく、空戦もなく、旅立つ様子もない。ヒロインはといえば義妹だけであり、いやいやこの義妹も大層素晴らしい義妹なのですが、飛空士シリーズにふさわしい悲恋を奏でるキャラかというとそうでもない。中盤辺りまで読み進めてようやく気付き、そして予想通りになった事はといえば、この物語が実はシリーズものであったという事です。

また読み進めるうちに違和感があった点がもう一つ。それは3章になってようやく登場するクレア・クルスという少女。2章までの展開を見ると、ヒロインの座は当然義妹のアリエルだと思うじゃないですか。王子様という存在に触れたアリエルの揺れる乙女心、初めてのときめきは何とも甘酸っぱく、恥ずかしくもありますが、それはヒロインの魅力として十二分。強いインパクトはなくとも、ヒロインとしてやっていけるだけのキャラではあります。

しかし、表紙絵を見てみるとヒロインは主人公の敵役のニナにも思えます。また、綴じ込みイラストを見てみると3章で登場したクレアが大きく出ております。あれれ、もしかしてこの物語ってばヒロインわんさか状態なの? いやいや、そんな訳あるはずはない。そんな事は、この物語を読んでいる読者ならすぐ気付くってなモノです。そう、この物語の真のヒロインは義妹のアリエルではなく、表紙絵を飾っているニナになるはず。ならば、3章という終盤になってようやく登場してくるこのクレアという少女はいったい何なのか。導かれる結論はただ一つ。読者が容易に予想でき、読者が期待する答えに向け、加速していく物語。そしてラストになってようやく語られる真実!

これ、これですよ! 読み進めていく中で僕らが予想したとおりの、僕らが期待した通りの展開。飛空士シリーズの魅力といえば、やはり胸を締め付け、胸を焦がすような恋愛。作者も語っていますが、前作の恋愛が「ローマの休日」なら、今作は「ロミオとジュリエット」なのです。敵味方別れた二人の本来結ばれるはずのない恋。美しくて儚いからこそ、僕らの心にいつまでも残る事となる悲恋のお話。

最後の最後に明かされる真実、それは今後の物語への期待を抱かせるのに充分でした。ただ前述の通り、1巻で完結しなかった事への軽い失望があったのは事実で、前作は1巻で綺麗にまとめたからこその傑作であったと思える部分もあり、複雑なところもあります。まぁ、それは今後の続刊の出来次第ですし、シリーズ化した事により大河ドラマとしての魅力も兼ね備えた傑作になることに期待しつつ、今後の続刊を待ち望みたいと思います。

しかし、クレアがヒロインだということは、アリエルは完全に当て馬確定ですね。何という切ない片想いヒロイン! だがオレはそういうヒロインが大好きなので個人的に応援したいところです。

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