「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読んで

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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
岩崎夏海 ダイヤモンド社


完全に表紙買いでした。何というかもう、発想の勝利というか着眼点の勝利というか、このタイトルを読んだだけで俄然興味が湧いてくるのです。それに加えこの表紙絵と来ましたよ。そして購入の一番の動機は、この本が漫画でもラノベでもなく、ビジネス書コーナーに並べられていたという事実なのです。嘘みたいだろ、この表紙絵でビジネス書なんだぜ?

まぁ、ここまでならよくある「萌える○○」的な萌えと実用書をミックスしたタイプの本であったのかもしれませんが、驚きなのがこの本が行きつけの本屋のビジネス書ランキングで堂々2位を飾っていたという事なのですよ。他の並み居るお堅そうなビジネス書に並んで、ひときわ異彩を放つこの萌え絵のビジネス書が売れているというのだから、そりゃもう買うしかないでしょ!

そんな前知識無しで買ってきたこの本なのですが、amazonのランキングでも上位に位置していますし、ビジネス書ランキング2位の実績も伊達でなく、面白く、興味深い内容でありました。

タイトルにあるとおり、とある公立高校の野球部マネージャーの女子高生が、野球部を甲子園に連れて行くためにどのようにしたらいいかと考えていたところに経営学書『マネジメント』に出会ったところから本書の奇想天外な物語が展開されていきます。野球部という非営利組織に置いて、経営学に基づいたチーム作りを目指していくという突飛な内容。各章の内容を見ても、それだけで本書の異質さが浮き彫りになってきます。

第一章 みなみは『マネジメント』と出会った
第二章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ
第四章 みなみは専門家の通訳になろうとした
第五章 みなみは人の強みを生かそうとした
第六章 みなみはイノベーションに取り組んだ
第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
第八章 みなみは真摯さとは何かを考えた


ちなみに本書のヒロインはみなみちゃん。野球部のマネージャーと来ればやはりみなみちゃんというのが相場なのでしょう。そのみなみちゃんがマネージャーとはマネジメントする人なのだから、『マネジメント』を読んで野球部のマネジメントをしたって問題ないはずという斜め上の発想をもって、野球部を甲子園に連れて行くために奮闘するのです。

しかし、この着眼点があながち間違っていなかったということが本書の一番の面白さであり、本格的な経営書の内容を身近な部活という組織の中に当てはめて考えることも決して間違いでないというのが面白いんですよね。

経営学書『マネジメント』では「われわれの事業は何か」「顧客は誰か」という問いからスタートしているのですが、野球部のマネージャーであるみなみはそれを野球部に置き換えて考えます。野球部にとっての顧客は誰か。野球部の顧客とは野球部に関わる全ての人々、部員から部員の親、教師、学校、地域住民、高野連、高校野球ファンにいたるまで全員と位置づけ、野球部、ひいては高校野球に顧客が求めていることは感動であるとの結論に達します。そして感動を与えることこそが野球部のすべきことであり、顧客に感動を与える組織こそが野球部であると定義づけていきます。

このように全てに置いて、ドラッカーの『マネジメント』をバイブルとし、その言葉をかみ砕いては野球部に置き換えて考え、そして生かしていくのです。それが合っているかどうかは本書を読む人の数だけあり、それに対して自分はこう思うと考えるのも楽しく、自分の現状の立場と照らし合わせてみて、自分の所属する組織に置き換えて考えてみるとどうなんだろうと考えること自体もまた面白いのです。

ちなみに、本書のジャンルは小説です。萌えキャラが出てきて小難しい経営学の内容をかみ砕いて説明するタイプの解説書の類ではありません。驚くことにこの本は青春小説なのです。甲子園を目指す野球部を描いた王道青春ストーリーなのです!

本書を小説として読んでみると、最初は小説としての粗というか、稚拙な部分をどうしても感じてしまうところはありました。そこをカバーするだけの設定の妙があったので、興味深く読めてはいたのですが、全体的に見るとキャラも弱く、文体もなんだか読みづらく感じる部分があったのです。

ただ驚くことに、ラスト付近になると俄然面白くなるんですよね。『マネジメント』を活用しての野球部改善の内容が一段落付いて、物語に比重が移ってからの展開が何とも王道な青春していて熱いのです。不覚にもラスト付近で涙してしまうくらいでありました。個性に乏しかったキャラクター達もラストにいたっては皆が生き生きと動き出していましたし、前半に散りばめられていた伏線も回収され、納得のいく面白さであったと思える内容でありました。

突飛なビジネス書、萌えを交えた初心者向けのビジネス書という位置づけで読んでいただけに、最後の面白さは予想外なところはありました。本書の事を定義づけるなら、萌えに見せかけたビジネス書の皮をかぶった青春小説であったんでしょうね。面白かったです。興味を持たれた方は一読の価値はありますよ。


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら(ハックルベリーに会いに行く)

情弱故に知らなかったのですが、作者が2年前にブログで書いた内容が本書の元ネタとなっているようですね。

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