ページをめくるといつもそこに君がいた、『四月は君の嘘』5巻

画像

『四月は君の嘘』5巻 新川直司 講談社コミックス

もう、圧倒的と言うしかない。もう、圧倒されるしかない。この作品の漫画力は一体どれほどまでに上がっていくというのか。今巻におけるコンクール編のクライマックスはもう圧巻なのです。これまでだってこの作品の演奏シーンの熱量には何度となく震えさせられましたが、今回のコンクール編クライマックスは心に響いてくるのです。公生の弾くピアノが、公生の抱く想いが、公生の描く世界が、公生の持つ情景が、それら全てが読んでいる自分へと流れ込んでくるのです。引き込まれていくのです。そしてそんな世界に心が共鳴するのですよ!


演奏の途中で弾くのを止めてしまう公生。最初は正確無比に、二度目は音が聞こえなくなり暗闇に落ち込むように、そして三度、演奏の質を変えて引き続ける公生。そう、この三度目の演奏の色鮮やかな音色にグイグイと引き込まれていくのです。もちろん、漫画ですから音は聞こえないんだけど、読めば分かる、この演奏シーンからは公生の弾くピアノが聞こえてくるんですよ。きらめくようなまばゆい音色が。

彼がピアノを弾く動機、演奏を止め、立ち止まったからこそ見えてきた彼自身の想い。それはかをりに伝えたい想い。ありがとうという気持ち、感謝の念。君のために弾こう、君に届けたいこの想い。そんな一途で真っ直ぐな想いが心に響いてこないわけがない。胸が締め付けられるような想いをさせられるのです。


チョークの匂いがする。不細工にヒビ割れた窓ガラス、遠くから運動部の声、桜の花びらの影、かすかな寝息、風景が変わる。

放課後の音楽室のこの情景。見開きページを大胆に何度となく使い、モノローグとコマ割の上手さで魅せられて、世界に引き込まれていくのです。読者の中にある共通認識、青春時代への郷愁を否応なく呼び覚まさせる、そんな描き方があまりにも秀逸すぎるのです!

そしてその情景は、公生のかをりへの想いそのもの。かをりの存在に助けられ、引っ張られ、このステージまでやってきた公生。その軌跡を思い返すとき、君がいるシーンばかりが浮かんでくる。


いつもそこに君がいた、君がいたんだ。

あああ、もう、何なんでしょうか、この青春ストーリー! 若者が迷い苦しみぶつかりくじけそうになりながらも、前を向いてがむしゃらに駆けていくこのきらめき。遠く昔に置き忘れてきた青春の一ページを追体験できるかのようなこのストーリー。あああ、もう、ホントにたまらないですよ。

物語はかをりと公生が出演することになるガラコンサートへと舞台を移していきますが、これまでに何度となくにおわされてきたかをりの秘密も気になるところ。どうにも体に重い病を抱えていそうな雰囲気バリバリじゃないですか。タイトルにもある「君の嘘」とは何なのか、それらも含めて今後ますます目が離せない漫画です。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック