漫画版『ビブリア古書堂の事件手帖』を読んで今更ながらに面白さを堪能
『ビブリア古書堂の事件手帖』2巻 交田稜/三上延 アフタヌーンKC
何でも原作はメディアワークス文庫初のミリオンセラーだそうで、テレビドラマが良くも悪くも話題になった作品ですよね、程度の知識しか持ってませんでした。どうにも、小説に対するアンテナが低くて原作知識が全くなかったのですが、ふとしたきっかけでグッドアフタヌーンで連載されていたコミカライズを読んだんですよ。そうしたら、もうすっかりその面白さの虜です。なるほど、これだけ人気のある作品だと頷かされる面白さだったのです。
古本屋の店主である栞子さんが、本にまつわるアレコレや、本に関わる人々の謎を解き明かしていくミステリー作品。栞子さんは怪我をしており病院生活なのですが、その病室から一歩も出ることなく、人の話を聞くだけで日常の中に潜む謎を次々と解明してきます。その様子は安楽椅子探偵そのもの。しかし、この物語は栞子さんが謎をズバズバ解明していくことの爽快感が売りと言うよりは、古書にまつわる蘊蓄や古書に関わる人間模様の謎を解き明かしていく物語としての面白さに魅力がありますよね。
また、そんなミステリーとしての魅力もさることながら、やはりヒロインである栞子さんの魅力が圧倒的に強いというのもこの作品の推すべき点であると思います。

古書に関することを語らせればそれはもう饒舌で、謎解きに関してもその切れ味はものすごく鋭いのに、いざ本以外の事となるとしどろもどろになる鈍くささを発揮。そして何よりこの見た目ですよ。黒髪ロングのメガネ姿。そしてこのおっぱい。良いものをお持ちですね、これは!
そんな栞子さんが、アタフタしたり、キリッとしたり、状況によって全く違う顔を見せてくれるのが読者としては非常に楽しいのです。また、この漫画版では栞子さんのそんな二面性を上手く描いているだけでなく、ストーリーの演出的な部分でも緩急ある見せ方をしており上手いなぁと思わせるのです。

例えばこのシーン。ホステスの彼女が旦那との馴れ初めを栞子さんに語って聞かせるシーンなのですが、過去の回想話の中にちゃっかり栞子さんが登場して、性的にストーレートな話に赤面しているというこの描き方。謎解きでキリッとした表情を見せる一方で、時にこうしたコミカルな演出もあり、緩急あるストーリーの見せ方によって飽きの来ない部分はあります。
原作本来のストーリーの面白さももちろんあるんでしょうが、漫画としても見せ方の上手さを心得ていて、原作未読で漫画から入ってきた自分のような読者でも楽しめるのは非常に嬉しいところですよ。原作未読の方はこの機会にこの漫画版から入ってみるのもいいかもしれませんね。