司法版デスノートになり得る実力を持つこの漫画、『ジキルとハイドと裁判員』

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『ジキルとハイドと裁判員』1~2巻 森田崇/北原雅紀 ビッグコミックス

最近スペリオールを読むのが非常に楽しみです。これまでは『医龍』を読むのを一番の楽しみとしていた所もあったのですが、最近は『ジキルとハイドと裁判員』が俄然盛り上がってきていて目が離せないのですよ。この漫画がかなり面白いのです!

この漫画、タイトルにある通り裁判員制度をテーマに扱った漫画です。これまでは司法の場を舞台にした漫画というと圧倒的に弁護士モノが多くて、その次に検事モノがあるのかなという印象でした。裁判官が主役の漫画って何かあったかなぁと思い返してみても『家栽の人』くらいしかパッと思いつかないのが現状。しかし、ここ最近は裁判員制度の開始もあって弁護士や検事でなく裁く側、裁判官や裁判員にスポットをあてた漫画というのも増えてきました。

そしてこの『ジキルとハイドと裁判員』もそんな流れの中で出てきた漫画ではありますが、この漫画は他の裁判員漫画とは全く別種の面白さを持っており、司法を舞台にした多くの漫画とは一線を画した面白さを持ち合わせているのですよ!

裁判官が主役の物語とくれば、法廷を舞台にしたリアルな裁判劇なのかなと思ってしまう所ですが、もちろんそういった要素もあるのですが、この漫画はまず設定としてのスタート地点がファンタジーというかオカルトというかフィクションなのです。『デスノート』においてライトの前に死神リュークが現れたことから物語が始まっていったように、この漫画の主人公である駆け出し裁判官ジキルの肩にハイドと名乗る異形の生物がとりついたところから物語は始まります。そして、この異形の生物ハイドのお陰により、主人公は自分の寿命と引き替えに物事の真実を知ることが出来る力を得るのです。

人を裁く立場の人間が真偽の程を見抜く力を得るという事。被告が吐いた嘘を嘘と見抜ける能力を持つという事。裁判官にとって、この力がどれほどまでに強力であるか。この力を得た主人公は、真実を知り得る唯一の人間という使命感から、真実に基づいた判決を下すという目的に向け、自分の信じる正義の道へと走っていくわけです。そして、この展開はまさにデスノートを彷彿とさせるわけなんですよ。

「真実を導くために真実をちょっと歪めるだけだ!」

裁判所の判決がいつも真実通りなのかと言われれば、そうとも限らない。無実の人間が有罪になることもあるし、有罪の人間が無罪を勝ち取る事もある。しかし、真実を知る力を得た主人公であるならば、真実に基づいた判決を下すことが出来、真実に基づいた判決に導くことが出来るのです。そして自分こそが出来る、自分にしかできないという思いこみ、思い上がりが力の過信と暴走を招いていく事になり、その様もまたデスノート的であり面白いのです。

また、ここに裁判員制度を絡めることによって、物語は俄然面白さを増していきます。この漫画において、この主人公にとって裁判員制度とは多数決ゲーム。プロの裁判官3人に、素人の裁判員6人。この9人による多数決によって判決が決まるわけです。プロの裁判官を自分の導きたい意見になびかせることは難しくとも、素人の裁判員であればなびかせることも出来る。その結果、通常の裁判ではあり得ない判決を導き出す事も出来るのです。

裁判員達を交えての合議の中で主人公の繰り出す誘導術と、それに抵抗する他の裁判官や、翻弄される裁判員達。この合議の中に心理ドラマや人間ドラマが詰まっていてものすごく白熱します。法廷劇での争いと言えば弁護士と検事というのがこれまで当たり前であった中で、裁判員同士による争いというベクトルを持ってきたのが非常に新鮮で面白いのですよ。

「正義とはルール。悪とはルールを犯すこと。だとしたらお前も悪ダナ。適正な手続きで判決を下すルールを犯した。」

そして裁判員達を主人公の意見に転ばす為に取る主人公の行為は、裁判官の常識から明らかに逸脱したモノばかり。真実を導くために、正義の道を踏み外していく主人公。真実に基づいた判決を下しているのだから、それこそが正義と思えそうなモノなのに、判決を導く過程はどうみても正義とは思えない。

話が進むにつれ、主人公のこうした行動は目に付くようになり、どんどん黒くなっていく様もこれまたダークでスリリング。作画的に見ても、その黒い表情の描き方も秀逸です。正義の番人であるはずの裁判官なのに、その顔はどう見ても悪人面になっているというギャップがこれまたたまらないのです。

裁判員制度という新たな制度を見事に活かしつつ描かれるこの物語。裁判員制度は多数決で決まるモノであり、市民が参加する怖さ、矛盾、問題点などを暗にあぶり出している側面もあり、その部分でも興味深いです。でも、この漫画の本質と言えば、そういった暗なる主張ではなく、力を得た人間の行動そのものですよね。今後の展開が非常に楽しみな漫画です。オススメですよ。

こちらで第1話を試し読みできます

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